●編集部総評
第1回ルルルカップには、編集部の予想を上回る138本ものご応募がありました。短い枚数でテーマに沿ったもの……ということで、難しかったのではないかと思います。しかしながら、キャラクターはもちろんのこと、読ませる作品が多くレベルの高さに驚きました。ご応募いただいた作品にはファンタジーが多いようでしたが、現代やミステリー、伝奇やSFまで幅広いジャンルが集まりました。
WEB掲載の10本は、中でも要素をしっかり入れつつ物語を読ませる力を持った作品です。それぞれタイプは違いますが、短編の短さを感じさせず、読後の満足感がありました。ここから、新たに育っていく方々が出てくることを期待したいと思います。
実験的な試みでしたが、結果的にとても面白く、新たな可能性が開けたように感じました。ご応募いただいた皆様はじめ、コメント投票をいただきました読者の皆様に深く感謝いたします。
第2回の応募は締め切りましたが、第3回の募集は始まっておりますので、今後とも皆さんで一緒に盛り上げていっていただけますよう、お願いいたします。
●編集部選評
【1】空駆ける 戸倉知子
短編でこのテーマを選び、しっかりと書ききった点を評価します。短い中に要素がしっかりと入っていて、ボリュームがあります。世界観の説明や戦闘シーンなどの量もちょうど良く、内容の割に清々しいラストです。少女小説にはなかなかない設定が新鮮でした。短編だからこそ出来たモチーフかとも思います。
【2】女王家の華燭 葵木あんね
とにかくキャラクターが魅力的! 主人公達の関係性に注目しながら、すんなり物語世界へ入っていけました。シーンの見せ方も上手く、イラストで見てみたいと思わせる力があります。所々言葉がおかしかったり、描写が足りないようにも感じましたが、この二人の物語をもっと読んでみたいと思いました。
【3】奇之縁起抄 〜暦注師始めの事〜 華村 洵
物語の完成度の高さは10本中ピカイチ! リアリティと説得力を持った、独自の世界観を築けています。文章も上手い。出てくる妖は妙に人間くさく愛嬌があります。主人公達の関係は始まったばかりですが、続きを読んでみたい。しかし、良くも悪くも落ち着いていて、キャラクターにもう少し弾けた派手な部分がほしい。
【4】放浪狐と薄紅の恋 矢貫こよみ
テンポが良く、一気に物語の中へ入っていける出だしが上手い。キャラクターもよく立っていて魅力があります。恋はまだまだながら、かわいらしい天狐と謎の青年という組み合わせは楽しかった。シーンは上手く描けていますが、状況や設定に説得力がないまま勢いで物語が進んでいる点は残念。
【5】乙女騎士の憂鬱 中村涼子
主人公のキャラが、良くも悪くもインパクト十分でした。やや強引ではあるものの、様々な要素が上手く配置されていて、ストーリーもしっかりしていました。キャラクターも個性的で魅力的です。ただ、設定に粗が目立ちます。設定と立場と行動がちぐはぐで説得力に欠ける点がもったいない。
【6】きみは天使じゃないけれど 瀬戸美月
憧れの人のためにがんばる主人公に好感が持てます。勢いがあり、学園ものとして恋と友情と恋敵と成長をうまく描いています。キャラクターもしっかりしていて面白く読めました。ただ世界観の不明瞭さ、不用意な現代語の使用が気になります。また、王子の目的が最後まで分からないため、ラストの好みが別れるかも。
【7】青き海の向こう側 繋鷹 鳴
主人公がかっこよく、とても爽快感があります。文章も読みやすく、テンポ良く進んでいく物語に引き込まれます。説明不足だったり、強引に感じる点もありますが、主人公から視点がぶれず気持ちの良い展開は楽しい。長い物語のプロローグ的な感じは否めませんが、面白かったです。やや相手役の年齢が上すぎるかな?
【8】幻想から覚めても 小椋新之助
可愛く勢いがあり、読んでいて楽しい。少し間違えると危険な王子の設定が、愛嬌のある憎めないキャラとして上手く描かれています。他のキャラもバランスが良い。主人公の口の汚さは好みが別れるところです。外見が上手くイメージできないので描写がもっと欲しかった。設定の甘さ都合の良さは短編ならでは。
【9】ミアシャム・ミエラの縁結び 牧内まり
短編としてとてもまとまりがよかったです。ミアシャム・ミエラの設定もおもしろい。主人公の感情が上手く描かれていて、その言動に共感できます。ただ、エピソードにもう少し変化や動きがほしい。状況は分かりやすいですが、会話だけで物語が進んでいる印象。有無を言わさぬお節介は、他のカップルでも使えそう。
【10】駆け落ちは青い月の夜に 悠木 裕
地に足のついたかわいらしい恋物語。主人公の何気ないことに一喜一憂する姿は、とても可愛く共感できます。一見やる気のなさそうな相手が実は…… というのも楽しい。タイトルと作中の小物が上手くつながり、ドラマチックなラストになっています。良くも悪くも、小さな世界の話ですがまとまりがありました。